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舌下免疫療法のコラム
Withコロナ時代のアレルギー性鼻炎(花粉症)治療

毎年の花粉症(季節性鼻炎)や1年を通しての鼻炎(通年性鼻炎)でお困りの患者様は、コロナ禍で、くしゃみや鼻水、咳といった症状について、以前よりも周囲の目が気になり、もっとしっかり症状を抑えたいと思われていないでしょうか。
アレルギーで目がかゆい場合にも、コロナウイルス感染の恐れから目を触ることがためらわれ、コロナ禍前と比べるとストレスが増えておられると思います。そのようなお悩みをお持ちの方に、体質を改善させる「舌下免疫療法」という治療法をご紹介します。

アレルゲン免疫療法~皮下免疫療法と舌下免疫療法~

アレルギーの原因であるアレルゲンを少量から体内に投与し、徐々に身体をアレルゲンに慣らし、症状やQOL(生活の質)を改善する治療法を「アレルゲン免疫療法」と言います。症状を緩和するだけの従来の薬と異なり、根本的な体質改善が期待できる治療法です。1911年に英国で報告されて以来、1世紀を超える歴史をもち、アレルギー疾患における唯一の原因療法とされています。日本でも1960年代より行われており、50年以上の長い歴史があります。

これまでの「アレルゲン免疫療法」は、医療機関で皮下に注射する「皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy;SCIT)」だけでした。この治療法は注射であるため痛みを伴い、さらに治療の始めは徐々に増量するため頻回に通院が必要でした。その後、様々な投与方法が検討された結果、舌下法が最も実用的とされ、本邦では2014年より「舌下免疫療法」が開始されています。
この「舌下免疫療法(sublingual immunotherapy;SLIT)」は舌下に治療薬を投与(経口投与)するため、「皮下免疫療法」のような痛みがなく、自宅で服用できます。

アレルギー性鼻炎は毎年増加しており、2019年の調査では、日本人の約40%が花粉症で、約25%が通年性アレルギー性鼻炎であると報告されています。

アレルゲンカレンダー

「アレルゲン免疫療法」は、鼻の症状だけでなく、眼の症状にも有効とされており、年単位で継続することで、アレルギー症状を治したり、長期にわたり症状をおさえる効果が期待できます(3年以上推奨)。また症状が完全におさえられない場合でも、症状を和らげ、アレルギー治療薬を減らす効果が期待できます。

もちろん「アレルゲン免疫療法」は「アレルギー性鼻炎診療ガイドライン」にも記載されています。

〇舌下免疫療法

現在国内では「スギ花粉による季節性アレルギー鼻炎」と「ダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎」が保険適応となっています。

◆開始前に必要な検査

原因となるアレルゲンを用いて行う治療法のため、原因となるアレルゲンを確定する血液検査(特異的IgE抗体検査)が必要です。検査後、1週間程度で結果をご説明いたします。当院では、小さいお子様に対しては、指先からの採血で調べることが可能なイムノキャップ ラピッド アレルゲン8も行っております。8つの原因アレルゲンを調べる検査ですが、スギ花粉とダニはもちろん含まれております。こちらは当日20分程度で結果をご説明することが可能で、この検査で陽性であれば舌下免疫療法を開始することが可能です。

<イムノキャップ ラピッド アレルゲン8で測定可能なアレルゲン8項目>

測定アレルゲン(ハウスダスト計)イヌ皮屑、ネコ皮屑、ヤケヒョウヒダニ、(花粉系)シラカンバ、スギ、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ

<イムノキャップ ラピッド アレルゲン8 検査の流れ>

検査の流れ

◆開始時期

<スギ花粉症の場合>

スギ花粉が飛んでいる時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっているため、副反応のリスクを考慮し、飛んでいない時期に治療を開始します。また薬の効果を認めるまでに最低でも3ヵ月以上の継続が必要なため、6月頃から10月頃に開始するのが望ましいと考えられます。

<ダニの場合>

基本的には1年中開始が可能ですが、スギ花粉やその他の花粉症もお持ちの場合には、花粉症の時期を避けて開始します。

◆服用方法

舌下免疫療法は安全性が確認された治療法ですが、初回投与時はまれに重篤な症状(強いアレルギー反応)が生じる可能性があるため、1回目は病院にて医師の立ち合いのもとに服用し、院内で30分ほど安静、待機します。翌日以降は、ご自宅にて毎日1回、治療薬を舌の下に置き、1分程度保持したあと、飲み込みます。(その後5分間はうがいや飲食を控える必要があります)

<当院における舌下免疫療法の流れ>

舌下免疫療法の流れ

◆治療期間

少しずつアレルゲンを投与し、体をアレルゲンに慣らすことから始め、数年にわたり継続して服用します(3年以上推奨)。WHO見解書では35年を目安とすることが推奨されています。その間は定期的な通院(1ヵ月に1回)が重要です。

◆副作用

現在、国内では重篤な副作用は報告されていません。口の中の症状(舌の下の腫れ、口内炎、唇の腫れ)や、のどのかゆみなどが生じる場合がありますが、通常一時的なもので、治療を中止することはほとんどありません。

◆費用

3割負担の場合、病院と調剤薬局で合わせて月に約2,500円、年間で約30,000円程度のご負担が生じます。

もちろん大阪市のこども医療証やひとり親家庭医療証(1医療機関ごと1日当たり最大500円、月2日限度)なども適応されます。

◆対象年齢

2018年から5歳以上の小児にも適応が拡大されたため、お子様でもお薬を正しく服用することができれば治療可能です。経験的には6歳くらいになるとうまく服用できることが多い印象です。お子様の場合には他のアレルギーの発症(アレルギーの進行)を抑制することも期待できます。

◆その他の効果

<喘息に対する効果>

  1. スギ花粉症と喘息をお持ちの患者様では、喘息に対する効果も認めるため、吸入ステロイドを減量できる可能性も報告されています。
  2. 現在、ダニに感作されている成人の喘息について、ダニの舌下免疫療法は有効であるというのが一般的な認識になっています。こちらも吸入ステロイドを減量できる可能性が報告されています。喘息の世界的ガイドライン(GINA ; Global Initiative for Asthma)でも、鼻炎を伴うダニ感作気管支喘息患者で1秒率(最初の1秒でどの程度息を吐き出すことができたかを表す数値で、70%を下回ると異常とされます)が70%以上の場合、ダニの舌下免疫療法を考慮することと記載されています。つまり、軽症から中等症の方で、炎症が安定している時期に治療を開始することが勧められています。国内のガイドライン(喘息予防・管理ガイドライン2021)においても、前述の方にアレルゲン免疫療法を考慮すると記載されています。

繰り返しになりますが、舌下免疫療法として、「スギ花粉による季節性鼻炎」と、「ダニアレルゲンによる通年性アレルギー性鼻炎」が保険適応となっています。季節を問わず症状を認める通年性アレルギー性鼻炎の方も、主な原因となるダニに対し、舌下免疫療法による治療を受けることができます。

また近年は、スギ花粉とダニの治療を同時に行う2剤の併用療法(dual SLIT)も安全性が確認されたために行われるようになっており、当院でも希望される患者様(小児を含む)に積極的に行っております。

当院では、従来の治療方法以外に、その他鼻レーザー手術やゾレア注射なども行っております。

毎年ひどい症状でお悩みの方は、ぜひ一度、ご相談ください。

「子供のアレルギー」と「舌下免疫療法」

  • 「アレルギー・マーチ」
    典型的な場合、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーから始まり、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などが年齢とともに次々と出現してくることが多く、これを「アレルギー・マーチ」と呼びます。このアレルギーの発症、進展を予防することが大切になります。
  • このアレルギーの進行には個人差があり、アレルギー性鼻炎のあとに気管支喘息が出現することもあります。気管支喘息を発症した方では、約1/3の割合でアレルギー性鼻炎が先行していたというデータもあり、小児の場合、新規喘息発症予防のため、アレルギー性鼻炎の治療は重要となります。花粉症患児でアレルゲン免疫療法を行うと喘息発症予防効果があることが報告されています。
  • アレルギーは低年齢化が進んでおり、2019年の調査では5歳を過ぎると約30%のお子様にアレルギーを認めると報告されています。調査ではスギ花粉症、通年性鼻炎の有病率ともに、小児期に急増しピークに達しており、特に10歳までが疾患成立の主要な時期とされています。
  • 特にダニアレルギーは、スギ花粉症などと異なり症状が1年中続くため、ご家族もダニアレルギーであることに気付いておられず、病院を受診した際に初めて指摘され驚かれるケースも多くあります。小学生くらいになると、鼻水や鼻づまりが改善されることで、勉強などへの集中力も向上すると思われ、アレルギーが心配な場合には検査を受けられることをおすすめします。

 

<重症度に応じた花粉症に対する治療法> ※鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版より

重症度 初期療法 軽症 中等症 重症・最重症
病型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型
治療 ①第2世代抗ヒスタミン薬
②遊離抑制薬
③抗LTs薬
④抗PGD2・TXA2薬
⑤Th2サイトカイン阻害薬
⑥鼻噴霧用ステロイド薬
①第2世代抗ヒスタミン薬
②遊離抑制薬
③抗LTs薬
④抗PGD2・TXA2薬
⑤Th2サイトカイン阻害薬
⑥鼻噴霧用ステロイド薬
①~⑥のいずれか1つ
①~⑤のいずれかに加え、⑥を追加。
第2世代抗ヒスタミン薬

鼻噴霧用ステロイド
抗LTs薬または抗PGD2・TXA2薬

鼻噴霧用ステロイド薬

第2世代抗ヒスタミン薬もしくは第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤※

鼻噴霧用ステロイド薬
鼻噴霧用ステロイド

第2世代抗ヒスタミン薬
鼻噴霧用ステロイド薬

抗LTs薬または抗PGD2・TXA2薬

第2世代抗ヒスタミン薬もしくは鼻噴霧用ステロイド薬

第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤
※オプションとして点鼻用血管収縮薬を2週間程度、
経口ステロイド薬を1週間程度用いる。
抗IgE抗体※※
点眼用抗ヒスタミン薬または遊離抑制薬 点眼用抗ヒスタミン薬、遊離抑制薬またはステロイド薬
鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例では手術
アレルゲン免疫療法
抗原除去・回避

(遊離抑制薬:ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗LTs薬:抗ロイコトリエン薬、抗PGD2TXA2薬:抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬)
:本剤の使用は鼻閉症状が強い期間のみの最小限の期間にとどめ、鼻閉症状の緩解がみられた場合には、速やかに抗ヒスタミン薬単独療法などへの切り替えを考慮する。
※※:最適使用推進ガイドラインに則り使用する。

<花粉症の抗原除去・回避(セルフケア)の方法>

花粉系

 

<重症度に応じた通年性アレルギー性鼻炎に対する治療法> ※鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版より

重症度 初期療法 軽症 中等症 重症・最重症
病型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型 くしゃみ・鼻漏型 鼻閉型または鼻閉を主とする充全型
治療 ①第2世代抗ヒスタミン薬
②遊離抑制薬
③Th2サイトカイン阻害薬
④鼻噴霧用ステロイド薬
①第2世代抗ヒスタミン薬
②遊離抑制薬
③鼻噴霧用ステロイド薬
必要に応じて①または②に③を併用する。
①抗LTs薬
②抗PGD2・TXA2薬
③Th2サイトカイン阻害薬
④第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤
⑤鼻噴霧用ステロイド薬
必要に応じて①、②、③に⑤を併用する。

鼻噴霧用ステロイド薬

2世代抗ヒスタミン薬

鼻噴霧用ステロイド薬

抗LTs薬または抗PGD2・TXA2薬
もしくは
第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤
※オプションとして点鼻用血管収縮薬を1~2週間に限って用いる。

鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例、
保存療法に抵抗する症例では手術

アレルゲン免疫療法
抗原除去・回避

(遊離抑制薬:ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗LTs薬:抗ロイコトリエン薬、抗PGD2・TXA2薬:抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬)

 

 

 

<通年性アレルギー性鼻炎の抗原除去・回避(セルフケア)の方法>

ハウスダスト系

 

参考画像:
ダニ_スギ_ヒノキ

 

参考文献:
1)日本アレルギー学会スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き作成委員会.:スギ花粉症におけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版). 東京:メディカルレビュー社:2018.
2)日本アレルギー学会ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き作成委員会:ダニアレルギーにおけるアレルゲン免疫療法の手引き(改訂版). 東京:メディカルレビュー社:2018.
3)川島佳代子:専門医のためのアレルギー学講座 46.免疫療法4.舌下免疫療法.アレルギー71(2):92-101, 2022.
4)大久保公裕:スギ花粉症に対する免疫療法:舌下免疫療法と抗体療法.アレルギー70(8):948-954, 2021.
5)森田恭平ら:スギ花粉症合併喘息に対する舌下免疫療法の臨床的効果: ~舌下免疫療法上乗せによる吸入ステロイド薬の減量は可能か?~.アレルギー70(8) : 955-964, 2021
6)湯田厚司ら:スギ花粉とダニの併用舌下免疫療法の安全性. 日耳鼻122(2):126-132, 2019.
7)湯田厚司:スギ花粉症とダニの舌下免疫療法 自験例に基づく治療方針と工夫. 日耳鼻 124(7): 968-973, 2021.
8)Bousquet J , et al:Allergen immunotherapy: Therapeutic vaccines for allergic diseases A WHO position paper. J Allergy Clin Immunol 102:558-562, 1998.
9)Moller C, et al:Pollen immunotherapy reduces the development of asthma in children with seasonal rhinoconjunctivitis (the PAT-study) . J Allergy Clin Immunol 109:251-256, 2002.
10)Global initiative for asthma:Global strategy for the diagnosis and prevention. Global Initiative for Asthma.
11)日本アレルギー学会:喘息予防・管理ガイドライン2021. 東京:協和企画:2021.
12)Sayaka Kikkawa, et al:Sublingual Immunotherapy for Japanese Cedar Pollinosis Attenuates Asthma Exacerbation. Allergy Asthma Immunol Res 11:438-440, 2019.

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