コラム
Column
2025/09/04
亜鉛欠乏症の薬『ジンタス』の投薬期間制限が2025年9月1日に解除されました
亜鉛欠乏症とは?
亜鉛欠乏症とは、身体の様々な機能を維持していくために働いているミネラルで、われわれに必要不可欠な栄養素である亜鉛が不足している状態です。亜鉛が欠乏すると亜鉛酵素の活性が低下し、味覚障害、貧血、皮膚炎、免疫機能低下、生殖機能の低下、発育不全、脱毛、症食欲低下、口内炎、認知機能障害などの様々な障害や症状をきたします。特にタンパク質合成が盛んな部位や亜鉛が高濃度に存在する部位で障害が生じやすいと考えられます。
診断は、血液検査にて低亜鉛血症(血清亜鉛値が低下した状態)を認め、さらに亜鉛欠乏による症状または血清アルカリホスファターゼ(ALP)低値も認めると確定的になります。
どのような薬がありますか?
治療は通常薬物療法(補充療法)であり、不足している亜鉛を亜鉛製剤で補充していきます。
現在国内で主に使用されている薬剤は以下の3種類です。
それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
<成分名>
1.ポラプレジンク:古くから代用されてきた亜鉛を含む胃潰瘍治療薬
| メリット | ・薬価が低い ・嘔気などの副作用を認めにくい |
| デメリット | ・1日量である 150mg 中に亜鉛が 34mg しか含有されていない (高度の欠乏症の方や症状の強い方には適さない) |
2.酢酸亜鉛:2017年から低亜鉛血症に適応となった薬剤
| メリット | ・高容量の投与が可能(1日150mgまで) |
| デメリット | ・ポラプレジンクと比べると薬価が高い ・嘔気(むかつき)や嘔吐など消化器症状の副作用 (嘔気:5.4~11.9%) ・高容量の場合、1日2~3回の服用が必要 |
3.ヒスチジン亜鉛:2024年に発売された最新の薬剤
| メリット | ・高容量の投与が可能 ・嘔気(むかつき)や嘔吐など消化器症状の副作用が 酢酸亜鉛より少ない(嘔気:0.2~2.8%) ・1日1回の服用でよい |
| デメリット | ・ポラプレジンクと比べると薬価が高い ・新薬であるため1回の診察で14日分までしか処方できない (投薬期間制限あり) |
●薬の費用は?
| 一般名 | 後発薬品 の 有無 |
薬剤名 | 亜鉛含有量 (/錠) |
服用回数 (/日) |
費用 (自己負担3割の場合) (/日) ※選定療養費を除く |
|---|---|---|---|---|---|
| ポラプレジンク | 先発 | プロマックD錠/顆粒 | 17mg | 2回 | 約10円 |
| 後発 | ポラプレジンクOD 錠/顆粒 | 17mg | 2回 | 約9円 | |
| 酢酸亜鉛 | 先発 | ノベルジン錠 | 25mg | 1~3回 | 約60~180円 |
| ノベルジン錠 | 50mg | 1~3回 | 約96~290円 | ||
| 後発 | 酢酸亜鉛 | 25mg | 1~3回 | 約28~85円 | |
| 酢酸亜鉛 | 50mg | 1~3回 | 約44~133円 | ||
| ヒスチジン亜鉛 | 先発 | ジンタス錠 | 25mg | 1回 | 未発売 |
| ジンタス錠 | 50mg | 1回 (1~3錠) |
約70~210円 |
薬の選び方は?(当院の場合)
上の表が示すように、ポラプレジンク(後発)と酢酸亜鉛、ヒスチジン亜鉛の負担額にはかなり差があるため、軽度から中等度の亜鉛欠乏症の場合には、ポラプレジンクから開始し、数か月後の血液検査にて改善が乏しい場合には、他の亜鉛薬を追加することをお勧めします。
逆に高度の亜鉛欠乏症や症状の強い方の場合、ポラプレジンクは1 日量である 150mg 中に亜鉛が 34mg しか含有されていないため、補充に時間を要する可能性が考えられ、酢酸亜鉛から開始し、定期的な血液検査にて服用量を調整していきます。(2023年に酢酸亜鉛の後発薬品が発売され、費用負担が低くなったことで以前よりも投与量の調節が行いやすくなりました。)
ヒスチジン亜鉛『ジンタス錠』については、嘔気などの副作用が酢酸亜鉛よりも少ない点、服用回数が1日1回でよい点から、酢酸亜鉛で嘔気などの副作用を認める方や、1日1回の服用を希望される方には非常によい適応と考えます。ただし、新しく発売された薬(新薬)のため、本年8月までは1回の診察につき14日分までとする投薬期間制限があり、亜鉛の定期補充としては内服していただきにくい状況でした。
※亜鉛は銅や鉄の再吸収を抑制する働きがあり銅欠乏症や鉄欠乏症を引き起こす可能性があるため、治療中は血清亜鉛値以外に、血清銅値、血清鉄値も数か月ごとに測定することが勧められています。
ヒスチジン亜鉛『ジンタス』の投薬期間制限が2025年9月1日に解除され、処方しやすくなりました
ついに2025年9月1日より投薬期間制限が解除されたため、当院でも多数通院していただいている亜鉛欠乏症の方に、さらに選択肢が広がることになります。


最後に
当院では亜鉛の検査や、亜鉛欠乏に対する補充療法を行っております。
亜鉛欠乏症は日本では15~25%の方に認めると報告されており、決してめずらしいものではありません。また亜鉛欠乏症では症状が非常に多彩であるため気付かれていないケースも多く、気になる場合にはお気軽に当院までご相談ください。
参考文献
1)独立行政法人医薬品医療機器総合機構:ノベルジン錠審査報告書. 2017.
2)独立行政法人医薬品医療機器総合機構:ノベルジン錠再審査報告書. 2020.
3)岩室雅也ら:酢酸亜鉛起因性胃粘膜傷害の1例. 日消誌 119 : 853-857, 2022.
4)独立行政法人医薬品医療機器総合機構:ジンタス審査報告書. 2024.
5)ノーベルファーマ株式会社:ジンタス市販直後調査. 2025.






















