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2026/03/19

重症の花粉症の方へ。効果の高い注射薬があります

抗体治療薬「ゾレア(オマリズマブ)」という新しい治療

3月に入ってから急に花粉症の症状が現れ、一気に重症化される患者様が増えています。症状が重度になってしまった場合、花粉症の内服薬や点鼻薬のみでは効果が乏しい場合があります。

また花粉症で、次のようなお悩みはありませんか?

 
  • 薬を飲んでも 鼻水・鼻づまり・くしゃみがつらい
  • 花粉の時期は 仕事や勉強に集中できない
  • 野球やサッカーで頑張っているお子様がこの時期に苦しそうで、パフォーマンスが落ちている
  • 3月〜4月に大切なイベントが控えている(受験、資格試験、結婚式、スピーチ、プレゼンなど)

このような重症のスギ花粉症の方には、注射薬「ゾレア(Xolair®)」による治療という選択肢があります。
当院でも、条件を満たす患者様にご案内しており、この3月も連日多くの患者様がご相談に来られています。

ゾレアとはどんな薬?

ゾレア(一般名:オマリズマブ)という薬は、アレルギー反応の原因となるIgE抗体の働きを抑える抗体製剤です。

2009年から気管支喘息の治療薬として、2017年からは慢性蕁麻疹の治療薬としても国内で使用されてきた薬剤ですが、2020年から飲み薬や点鼻薬を続けても効果が乏しい重症のスギ花粉症の患者様にも使用できるようになっています。ただし、使用できる期間は2月〜4月に限られます。

ゾレアの作用は?

鼻水・鼻づまり・くしゃみ、目の痒みなどの症状を引き起こすアレルギーには「IgE抗体」が関与しています。

 

花粉症の症状は次のような仕組みで起こります。

  1. 花粉(抗原:アレルゲン)が体内に入る
  2. 抗原と結合する性質を持つ「花粉に特異的な)IgE抗体」が体内で作られる
  3. IgE抗体が炎症にかかわるマスト細胞表面にあるIgE専用の受容体に結合し、待機します
  4. 再度抗原が体内に入り、IgE抗体とマスト細胞表面で結合すると、マスト細胞にスイッチが入ります
  5. マスト細胞からヒスタミンロイコトリエンなどの炎症化学物質が放出される
  6. くしゃみ・鼻水・鼻づまりが起こる
(参考文献1より引用)

一般的な内服薬の場合、「抗ヒスタミン薬」であればIgE抗体が花粉に反応した後に肥満細胞から放出されるヒスタミンという化学物質の働きを、「抗ロイコトリエン薬」であればIgE抗体が花粉に反応した後に肥満細胞から放出されるロイコトリエンという化学物質の働きを主に抑えます。すなわち、アレルギー反応の「下流」(⑤→⑥)で症状を抑えます。そのため抗ヒスタミン薬のみで症状が改善しない場合など、抗ロイコトリエン薬などを同時に使用して他の化学物質の働きも抑えることで効果の増強を期待します。これに対しゾレアの場合、IgE抗体と直接結合しIgE抗体とマスト細胞との結合をブロックするため、アレルギー反応を「上流」(②→③)から抑えることになります。つまり、従来の薬と異なり、炎症を起こす化学物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)が産生・放出される前にアレルギー反応を抑えるため、より根本的な症状改善が期待されます

ゾレアの対象者は?

以下のすべてを満たす患者様が対象になります。

 
  • スギ花粉のアレルギー検査(血液検査)の結果が陽性であること
    (スギ花粉抗原に対する特異的IgE抗体≧クラス3
  • 「鼻アレルギー診療ガイドライン」の基準にて、スギ花粉症の重症または最重症と診断されること
  • 過去に鼻噴霧用ステロイド薬及び内服薬による治療を受けたことがあり、効果が乏しかったこと
  • 今回のスギ花粉症の時期も、従来の治療で効果が不十分と判断されること
  • 血液検査で、血液中の総IgE値が30~1,500 IU/mlの範囲にあること
  • 12歳以上で、体重が20~150kgの範囲にあること(12未満の小児には適応がありません)

花粉症の重症度とは?

花粉症の主な症状は、鼻水(鼻漏)、くしゃみ、鼻閉です。
この3つの症状の程度によって、重症度を判定します。

ゾレアの投与方法は?

スギ花粉が飛散する2月~4月の期間、2週または4週毎に皮下に注射します。皮下注射というのは、インフルエンザ等のワクチンを注射するのと同じ方法です。(1回あたりの投与量や投与の間隔は、血液検査結果および体重に基づいて設定されます。)

ゾレアで期待できる効果は?

初回投与後、数日~2週間で効果を認めます。

 
  • くしゃみ、鼻汁、鼻づまりの改善
  • 目や身体のかゆみの改善
  • 喘息をお持ちの場合には喘息症状の改善

ゾレアの良い点は?

 
  • アレルギー反応をより上流で抑えるため、既存の薬剤よりも高い効果が期待できます。
  • 眠気の副作用がありませんので、受験生の方や仕事で車を運転される方などでも安心して受けていただくことができます。

ゾレアの注意を要する点は?

 
  • 注射薬ですので、注射部位に赤みや腫れを認めることがあります。
  • 非常にまれですが、全身のかゆみ、蕁麻疹、血圧低下、気管支のけいれんや呼吸困難などのアナフィラキシー症状が出現することがあります。そのため副作用やアレルギーの出現の有無を確認するため、初回注射後のみ15~30分ほど院内でお待ちいただきます。

※ゾレアは、気管支喘息等ではすでに国内でも広く使用されている薬剤ですので、安全性はすでに十分に評価されております。

ゾレアの費用は?

体重血液中の総IgE値によって、投与量や注射回数が変動するため、費用は個々の患者様で異なります

通常、体重が大きいほど、総IgE値が高いほど、投与量や投与回数が増えることになります。
最も一般的なケース(1回の投与量300mg(2.0mL)、4週間毎)で、1か月17,488円となります。

もちろん高額療養費制度、大阪市のこども医療証やひとり親家庭医療証(1医療機関ごと1日当たり最大500円、月2日限度)などは適応されます。

 

総IgE値

検査結果から確認できます(当院で検査を受けられた方)

①通常のアレルギー検査ではこちらに記載されています

②Viewアレルギー39検査ではこちらに記載されています

※当院で行っております「指先からの1滴の採血で行う41種類のアレルギー検査(ドロップスクリーン)」しか受けておられない場合、血清総IgE濃度を測定できていませんので、通常の静脈採血による検査が追加で必要になります。

 

投与量

この数値と体重で計算します。

例. 体重65kg 総IgE値310 の場合
→下の表よりゾレアの投与量は4週間ごとに450mg となります

 

薬剤費

例. 体重65kg 総IgE値310 の場合 →ゾレア投与量は4週間ごとに450㎎
→下の表より 3割負担の場合 1回約19,000円になります

 

ゾレア投与までの診察の流れ

当院にてゾレアを注射させていただくには、問診、診察以外に、アレルギーを調べる血液検査が必要になります。ゾレアをご希望の場合には、一度受診していただき、診察時に医師またはスタッフにお伝えください。

アレルギーを調べる検査の結果を確認するには通常約1週間かかりますので、ゾレアの注射は次回以降でのご対応となります。

※当院では1滴の血液から当日中に検査結果が分かる「ドロップスクリーン」による検査も行っております。

→詳しくはこちら

 

 

初診

  • 花粉症の治療について説明(抗アレルギー薬の使用、鼻レーザー治療、舌下免疫療法など)

→ゾレアを希望される場合

  • アレルギーを調べる血液検査(スギ花粉など個々の特異的IgEおよび総IgE濃度)
    ※過去の検査をお持ちの場合には検査が不要になることあり
  • 既存治療の開始(抗アレルギー薬:抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイド薬など)

 

体重および総合IgE濃度より、ゾレアの投与量・投与間隔が決定→自己負担額を算定

 

電話にて事前に症状を聞き取らせていただき、①既存治療で効果不十分と診断され、②ゾレアの自己負担額を了承し希望される場合、ゾレア投与日の予約をさせていただきます

 

2回目の受診時、ゾレア投与

過去に他院で受けられたアレルギー検査の結果をお持ちの場合には、お持ちいただけると追加のアレルギー検査が不要になるケースがございます。また昨年までに内服したことのあるアレルギーの薬や点鼻薬(スプレータイプ)の名前をお分かりになる場合には、診察時にお伝えいただくようお願いいたします。

最後に

今シーズンも多くの患者様がゾレア注射のご相談に受診されているため、改めてご案内させていただきました。

当院におきましては2022年には数名であった治療ですが、その後口コミやインターネット、マスコミによる報道などで徐々に広がり、2023年には10名以上となり、2026年3月時点では希望者が増え毎日のように注射を行っている状況です。

4月末まで、適応のある重症の方は治療を受けることが可能です。

重症のスギ花粉症でお悩みの患者様は、お気軽に当院へご相談ください。

参考文献
  1. 一般社団法人 日本アレルギー学会 : アレルギー総合診療のための分子標的治療の手引き 2025
  2. 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 : 鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版および2020年版
  3. 村上亮介, 大久保公裕:花粉症. 小児内科 55 : 229-235, 2023.
  4. Tsabouri S, Ntritsos G, Koskeridis F, et al:Omalizumab for the treatment of allergic rhinitis:a systematic review and meta‒analysis. Rhinology 59:501‒510, 2021.
  5. Okubo K, Okano M, Sato N, et al:Add‒On Omalizumab for Inadequately Controlled Severe Pollinosis Despite Standard‒of‒Care:A Randomized Study. J Allergy Clin Immunol Pract 8 : 3130‒3140, 2020.
  6. 吉川 沙耶花, 峯川 明, 家坂 辰弥ら : オマリズマブを使用した重症スギ花粉症20例の臨床的検討, 日耳鼻 125 : 884―891, 2022.
  7. 平野康次郎 : 重症スギ花粉症に対する治療-生物学的製剤による治療の立場から-, JOHNS 41 : 198-200, 2025.

 

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