コラム
Column指先からの採血で41種類のアレルギー検査へ
(花粉症、ダニ・ホコリから食物アレルギーまで)
当院では今まで指先からの採血より8種類のアレルギー検査(イムノキャップラピッド アレルゲン8)を行っておりましたが、この度新しい検査機器(ドロップスクリーン A-1)を導入したため、1滴の血液から41種類の検査を行うことが可能となりました。
特に今まで検査をお勧めしにくかった小さなお子様に、積極的に利用していただきたく考えています。
検査の流れ
ドロップスクリーンA-1の特徴
- 30分で結果がわかる
- 指先から少量採血
- 41項目(食物系22項目、吸入系・その他19項目)を1度に検査
- アレルギー反応を7段階で判定
アレルギーとは?
私たちには体内に入ってくる危険な敵を発見し排除しようとする免疫の働きがありますが、ときに無害な侵入者を敵とみなし攻撃してしまうことがあります。これを「アレルギー反応」と言い、アレルギーとは、その反応が過剰に起こってしまう状態です。アレルギーには、花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがあります。
アレルギー性鼻炎でいうと、1960年代後半から花粉症を中心に徐々に増加しており、2019年の調査では日本国民の約半数(49.2%)に症状を認めると報告されています。
子供さんの場合、アレルギー疾患は成長とともに治っていくこともありますが、アレルギー性鼻炎、特に花粉症は自然には治りにくいことが知られています。また、アレルギー性鼻炎や花粉症は「鼻の症状」をきたすだけでなく、成長とともに喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど新たなアレルギー症状を起こすようになる傾向があります。このような現象は「アレルギーマーチ」と呼ばれます。アレルギーの進行(アレルギーマーチ)を止めるには、今の症状をしっかり抑えておくことが大切です。
そのためには、アレルギーの原因(アレルゲンと言います)を突き止めておくことが、対策を考えるうえで非常に重要になります。アレルゲンを特定するための方法はいくつかありますが、血液検査が最も確実です。
ドロップスクリーンによる検査なら、お子様でも一瞬チクッとするだけで、アレルギーの有無や原因を調べることが可能です。特に採血が難しい小さなお子様にお勧めの検査です。また忙しい方でも当日には結果を知っていただくことができます。
(特定のアレルゲンのみ、または少数のアレルゲン項目の検査を希望される場合には、従来からの静脈採血によるアレルギー検査を行っています。)
まず、アレルゲンを調べることから始めましょう。
次のようなお悩みをお持ちの方にお勧めです。
- 子供さんのアレルギーを調べたいが、注射を嫌がるため検査ができない
- 大人の方でも注射が苦手な方
- アレルギーを調べたいが、仕事や家事が忙しく何度も通院できない
- 最近食べ物で口が痒くなることがある
- 毎年春に鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、目の痒みなどの症状がある
- 大掃除の後には鼻水、鼻詰まりが出やすい
またアレルギーを疑う症状としては次のようなものがあります。
- 最近食べ物で口が痒くなることがある
- 毎年春に鼻水、くしゃみ、鼻詰まり、目の痒みなどの症状がある
- 大掃除の後には鼻水、鼻詰まり、咳が出やすい
- ペットに近づくと鼻詰まり、くしゃみが出る
- 食後や入浴後など、体にかゆみを伴う発疹(じんま疹)が出るようになっている
- 家族がアレルギー体質(花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎)
特に子供さんの場合には自分の症状をうまく説明できず、気付くのが遅れることがあります。
子供さんの症状では以下の点にも注意が必要です。
- よく目をこすっている
- よく鼻をすすっている
- 鼻血が出やすい
- 鼻の下が赤くなってあれることが多い
ドロップスクリーンによるアレルギー検査
ドロップスクリーンによるアレルギー検査では、花粉やダニ、ハウスダストといった吸入系のアレルゲン以外に、食物アレルギーの原因となるアレルゲンも調べることができます(41種類)。
<吸入系・その他19項目>
ヤケヒョウダニ コナヒョウダニ ハウスダスト ネコ皮屑 イヌ皮屑 ゴキブリ ガ スギ ヒノキ ハンノキ シラカンバ カモガヤ オオアワガエリ ブタクサ ヨモギ アルテルナリア アスペルギルス カンジダ ラテックス
<食物系22項目>
卵白 オボムコイド ミルク 小麦 ゴマ ピーナッツ 米 大豆 トマト キウイ モモ バナナ リンゴ 鶏肉 牛肉 豚肉 マグロ サケ サバ エビ カニ
<判定の目安>
検査結果は一覧表にしてお渡しします。
特異的IgE抗体の種類別に、クラス0~6までの7段階で示されます。
クラス0は陰性、クラス1は偽陰性、クラス2以上が陽性になります。
陽性だからといって、必ずしも症状が出るわけではありませんが、クラス4を超えるとアレルゲンである可能性が高く、クラスが高いほど症状も強くなる傾向にあります。
費用は?
保険適応の検査で、3割負担の方で約5,000円、2割負担の方で約3,000円になります(検査費用のみ)。またお子様の場合には、大阪市のこども医療証は適応されます。
花粉‐食物アレルギー症候群(PFAS)とは?
花粉症の方の場合、その花粉の原因物質(アレルゲン)と似た性質をもつ生の果物や野菜を食べた時に、口の中がかゆくなったり、のどがイガイガしたり、口唇やのどが腫れたり、息が苦しくなったり、耳の奥がかゆくなったりすることがあります。これを花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)と呼びます。PFAS(ピーファス)は口やのどの症状が中心であり、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)とも言われますが、全身症状(顔面腫脹、じんま疹、喘息、腹痛、嘔吐、下痢、眼の症状など)を伴うこともあります。近年、花粉症の有病率の増加や発症年齢の低年齢化に伴い、PFASが増加しています。
子供さんの場合、特定の野菜や果物を嫌がって食べない原因が、アレルギー症状である可能性があり、無理に食べると前述の症状(口の中のかゆみや口唇の腫れなど)が出現することがあります。例えばスギ花粉症やヒノキ花粉症を持つお子さんが「トマトが嫌い」と言う場合には、花粉-食物アレルギー症候群の可能性が十分考えられ、無理に食べさせるのはお勧めできません。
花粉の種類によって、口内のアレルギー症状を引き起こしやすい食物の種類は異なります。アレルゲンを特定することで、子供さんが苦手とする理由が分かる可能性があります。(ただし食物アレルギーがあっても、血液検査では陽性と判定されないこともあります。)
対策としては症状を起こす果物や野菜を食べないようにすることが大切ですが、ジャムなどの加工品にしたり、加熱したりすれば(加熱調理された加工食品であれば)食べられることが多いです。実際、生のトマトは苦手でも、ケチャップやミートソースは大丈夫というお子様もおられます。スギやヒノキ花粉に似たトマトの成分が加熱により変化するためと考えられます。しかしながら、加熱したものは絶対に大丈夫とは言い切れませんので、アレルギー検査で陽性と判定された食物を初めて口にする時には、「慎重に」「少量から」開始してください。
(例えば、モモはジャムなどに加工しても抗原性が残るため注意が必要です。また、大豆に含まれるGly m4という物質は耐熱性があるため、豆乳や豆腐でもアレルギー症状が出現しやすく、同様にモヤシも大豆の発芽野菜であるため摂取する際には注意が必要です。)
※花粉と食物アレルギーの関係
食物アレルギー
「血液検査結果が陽性=食物アレルギー」ではありません。食物アレルギーについては、血液検査だけでは確定診断はできず、血液検査は診断の助けになります。
原因を確定(診断)するためには、病院で実際にその食品を極少量食べ、症状があらわれるかどうかを観察する「食物経口負荷試験」という検査が必要です。この検査は、重篤な症状が出現することリスクがあるため、すべての病院で行っているわけではありません。
対策としては、食べると症状が出る食物を除去するということが基本となります。
ただし血液検査で陽性であっても食べて症状が出ない場合は除去をする必要はありません。
確定診断を希望される場合には、専門の施設へご紹介させていただきます。
(ただし、当院の近隣には成人の検査を行っている施設がありませんので、お子様が中心になります。)
最後に
原因を知ること、それがアレルギー治療の第一歩と考えます。
まずはお気軽にご相談ください。