菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)
Medical information菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)とは
菊池病は発熱と頸部(首)のリンパ節腫脹をきたす良性なリンパ節炎です。
1972年に九州大学病理学講座におられた菊池昌弘先生らにより、悪性リンパ腫と似た組織像を示している特殊なリンパ節病が発見され、最初に報告されました。それまで悪性リンパ腫と考えられ治療されていた例の中に、この病気が隠れていたことが分かり、その後「Kikuchi's disease(菊池病)」として世界中へ広まった疾患です。国内では、「組織球性壊死性リンパ節炎」とか「亜急性壊死性リンパ節炎」とも呼ばれます。
東洋人に多く,欧米では比較的まれで、20代~30代の女性に多くみられます。
症状
発熱、頸部リンパ節腫脹(約8割は片側)、頸部の痛みが中心です。
発熱は38度以上の発熱が数週間以上続くこともあります。
なかには皮疹(発疹)、体重減少、嘔気・嘔吐、腹痛、関節痛、肝脾腫などを認める場合もあります。
原因
不明です。様々な感染症や膠原病との関連が調べられましたが、いまだに特定されていません。
治療
血液検査や頸部エコー検査などを行ないます。典型的な場合には、頸部エコー検査にて複数のリンパ節が重なるように連続して腫大し、数珠のように並ぶ所見が確認できます。ウイルス感染(Epstein-Barr ウイルスなど)や悪性疾患を除外し、臨床経過と合わせて診断します。診断に迷う症例では、穿刺吸引細胞診(首からリンパ節内に細い針を刺して内部の細胞を採取し、悪性所見の有無を調べる検査)や、リンパ節生検(皮膚を切開して腫れているリンパ節を摘出し、組織を顕微鏡下に確認する)が必要になる場合もあります。
確立された治療法はなく、対症療法が中心となります。通常は,無治療でも 1ヵ月から 1年弱の経過で自然軽快すると言われています。ステロイド剤が有効であることが多く、血液検査やリンパ節所見を確認しながら、ゆっくり減量していきます。数ヵ月から数年後に再発する場合もあり(約5%)、症状が改善した後もしばらく慎重な経過観察が必要と考えられます。
参考文献:
1) Kikuchi M:Lymphadenitis showing focal reticulum cell hyperplasia with nuclear debris and phagocytosis. Nippon Ketsueki Gakkai Zasshi 35:379-380, 1972
2) Kwon SY, Kim TK, Kim YS, Lee KY, Lee NJ, et al:CT findings in Kikuchi disease:analysis of 96 cases. AJNR 25:1099-1102, 2004.
3) Na DG, Chung TS, Byun HS, Kim HD, Ko YH, et al:Kikuchi disease:CT and MR findings. AJNR 18:1729-1732, 1997.
4) Lin HC, Su CY, Huang CC, Hwang CF, Chien CY:Kikuchi’s disease:a review and analysis of 61 cases. Otolaryngol Head Neck Surg 128:650-653, 2003
5)内水 浩貴ら:過去5年間の頸部リンパ節腫脹に対する検討. 日耳鼻 115:546–551, 2012.
先生より
院長 細野研二
プロフィール
●原因不明の発熱で、新型コロナウイルス感染やインフルエンザ感染などの検査が陰性の場合に、菊池病である可能性も考えられます。
●当院では必要に応じて頸部リンパ節の穿刺吸引細胞診も行なっております。
●発熱に加えて、首のリンパ節が腫れて痛い場合には、当院へお気軽にご相談ください。