橋本病
Medical information橋本病とは
甲状腺自己抗体が陽性で、びまん性の甲状腺腫大を呈し、甲状腺機能低下症をきたす疾患です。橋本博士により初めて報告(1912年)されたため「橋本病」と命名されました。20~50歳代の女性に多く、成人女性の3~10%に認められると考えられており、決して珍しい病気ではありません。
症状
半数以上は、甲状腺機能が正常で、びまん性の甲状腺腫大のみを認めます。そのため健診等で指摘(発見)される割合が多くなります。
その後炎症が進行すると下記のような甲状腺機能低下の症状を認めるようになります。
※全身倦怠感、身体のむくみ、便秘、食欲低下、寒がり、皮膚のかさつき、集中力低下、脱毛など
原因
甲状腺濾胞細胞に対する臓器特異的自己免疫疾患です。主な標的抗原はサイログロブリン(Tg)と甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)であり、サイログロブリン抗体もしくはTPO抗体を認めることが多く、甲状腺に慢性的な炎症が生じることが原因となります。
治療
甲状腺機能が正常の場合、定期的な観察(血液検査)を行います。
甲状腺機能が低下している場合、甲状腺ホルモン薬による補充療法を行います。
先生より
院長 細野研二
プロフィール
・橋本病の初期では、甲状腺機能は正常で、軽い甲状腺の腫大のみを認めることが一般的です。
・炎症が進行し甲状腺機能低下が始まっても重症例でなければ容易には気付かれず、たとえ自分で気付き病院を受診したとしても橋本病と診断されにくいケースもあります。例えば無気力、うつ、倦怠感などの精神症状のために心療内科や精神科を受診されたり、食欲低下や便秘、倦怠感などの症状のために消化器内科を受診されたり、身体のむくみのために循環器内科を受診されたり、皮膚の乾燥や脱毛などの症状のために皮膚科を受診されたり、生理不順などで婦人科を受診されたりといったことが考えられます。その結果、うつ病や肝機能障害、脂質異常症、心不全、更年期障害というような診断で治療が開始されることもあり、甲状腺の病気を疑うことが大切になってきます。
・甲状腺機能が低下すると全身の代謝が低下するため、脂質異常症(高コレステロール血症)や肝機能障害などをきたすことがあり、甲状腺機能とともに定期的な血液検査で経過を観察する必要があります。
・経過中に甲状腺の急速な増大を認める場合には、悪性リンパ腫などの合併が疑われることがあるため、早めに検査可能な施設へ受診されることをお勧めします。
・妊娠時には非妊娠時に比べ甲状腺ホルモンの必要量が30~50%増加するため、胎児への影響も考えると妊娠前から定期的な治療を受けておくことが重要です。
・甲状腺に関することでお困りの場合、お気軽に当院にご相談ください。