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2026/01/31

当院での甲状腺腫瘍の診療について

2025年11月30日に開催された「第10回日常診療経験交流会」(大阪府保険医協会/大阪府歯科保険医協会主催、グランキューブ大阪)において、協会からのご依頼もあり、当院での甲状腺診療について口演してきました。

発表の内容

第10回日常診療経験交流会
第1分科会「日常診療における工夫と実践(外来)」
※2025年11月30日(日)/グランキューブ大阪

タイトル:「耳鼻咽喉科クリニックにおける甲状腺外来」

発表前の抄録:

本邦における甲状腺疾患の罹患数は500~700万人、そのうち治療が必要な患者は約240万人と推計されているが、厚生労働省令和5年患者調査によると実際に治療を受けているのは約90万人とされており、発見されていない未治療の患者が多く存在しているのが現状である。また一方で近年、甲状腺結節(腫瘤)が発見され、耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ紹介される症例は増加している。その理由として、健診や人間ドックの受診率の向上、頸動脈超音波検査や胸部CT検査などを行える検査環境の向上、超音波技術の向上、臨床検査技師(特に超音波検査士) の技術と意識の向上などが考えられる。ただ発見された結節はほとんどが良性(約90%) であり、手術や治療が必要となるケースは多くはない。したがって発見率が上がった反面、それらすべてが病院に紹介されると病院の外来がさらに混雑し勤務医の負担を増加させる事態となることが危惧される。

演者は初期研修時から甲状腺手術に参加、研修終了後から甲状腺超音波検査(US)を学び、これまで甲状腺結節に対し1,000件以上の (超音波下) 甲状腺穿刺細胞診検査を経験してきた。またバセドウ病、橋本病、亜急性甲状腺炎などの炎症性疾患から良性腫瘍、癌、悪性リンパ腫等の腫瘍性病変まで多くの甲状腺疾患の診断や治療を担当してきたこともあり、病院での検査や外来の負担を少しでも軽減できれば、病院ではより高度な医療や手術に専念していただけると考え、当院では甲状腺の超音波検査だけでなく穿刺吸引細胞診(検査)も実施している。

今回は甲状腺結節の診療について、開院以降約5年間に穿刺吸引細胞診検査を行った症例の受診経路や結果などを振り返るとともに、耳鼻咽喉科クリニックで精査を行うことについて考察する。

当院の甲状腺外来について

前述の抄録でも述べさせていただいたように、少しでも地域の患者様のお役に立てるように、また総合病院や甲状腺専門病院での検査や外来の負担を少しでも軽減できるように、開院当初より院内にて甲状腺の迅速血液検査、超音波検査(US)以外に穿刺吸引細胞診(検査)も実施してきました。

甲状腺結節(腫瘤)診療の現在の問題点

甲状腺疾患に罹患している方は決して少なくないことに加え、近年甲状腺結節が見つかり耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ紹介される症例は増加しています。ただ発見された結節はほとんどが良性(約90%) であり、手術や治療が必要となるケースは多くはありません。

甲状腺結節診療の流れ

超音波検査では、甲状腺の大きさ、結節の数、大きさ、形状、境界、隣接臓器、頸部リンパ節腫大の有無などを詳細に確認し、必要があれば穿刺吸引細胞診(FNAC:fine needle aspiration cytology)を行います。

穿刺吸引細胞診とは腫瘤に細い針を刺して細胞を採取し、悪性細胞の有無を調べる検査のことです。
甲状腺における穿刺吸引細胞診は甲状腺結節の術前診断として最も信頼性があり、多くの症例で腫瘍の組織型まで推定可能ですが、最も重要な目的は良性と診断することにより不必要な手術を回避することです。

適応は超音波所見と結節の大きさにより定められており、悪性が疑われても5mm以下は通常対象となりません。

 

甲状腺結節に対する穿刺吸引細胞診の適応

(甲状腺腫瘍診療ガイドライン2024より抜粋)

充実性の病変と嚢胞性の病変では方針が異なりますが、共通しているのは、20㎜を超えたら一度はFNACを行いましょうということです。当院でも大きさが20㎜を超えていれば、他院を含め一度もFNACを受けておられない場合には、一度はFNACを行うことをお勧めしています。

1)充実性病変

基本的には10㎜を超えるもので悪性を疑う場合にFNACを施行し、10㎜以下の結節ではよほど強く悪性を疑う場合か、増大時に周囲へ浸潤しやすい部位にある場合など、症例を選択してFNACを行っています。

2)嚢胞性病変

内部に充実部分があるかどうか、その充実部分の形状や血流等を観察してFNACの適応を決めています。ただ嚢胞性病変は全く自覚がない状態から感染や出血で急速に増大し疼痛を認めて受診される方が一定数おられるため、疼痛緩和目的で穿刺吸引を行う場合もあります。

細胞診で悪性の場合

甲状腺の悪性病変の中で約90%を占めるのが乳頭癌です。根治には手術が必要ですが、進行が非常に緩徐で生命予後に関与しないことが多いことが最大の特徴で、近年、過剰医療が問題となっており、現在では最大径10㎜以下の微小癌については、リンパ節転移や遠隔転移が画像上明らかでなく、かつ気管や反回神経に近い部位に癌が位置していない場合、すぐに手術を行わず定期観察を行う方針(積極的経過観察)を取ることが多くなっています。(5年間経過観察にて増大する確率は約7%、新しくリンパ節転移が発見される症例は1.4%と報告されています。)

またその性質から、特に微小癌の場合や比較的早期で根治手術を受けられた場合には、血液検査と超音波検査でのフォローが中心となるため、クリニックでも対応が可能であると考えられます。

穿刺吸引細胞診を施行した症例の検討

今回、開院からの約4年半を振り返ってみました。

1)症状の有無と来院に至った理由

来院時に前頸部腫瘤、圧迫感、のどのつまり感などの自覚症状があった方は全体の43%で、約60%の方は自覚症状なく受診されていました。この症状がない方の来院理由で最も多かったのが「健診・人間ドックで発見されたから」で全体の31%であり、過去の他院からの報告とほぼ同様の結果でした。その他、当院受診時に偶発的に発見されたものが8%、他院で発見されたものが17%でした。健診・人間ドックで発見に至った検査としては、頸動脈超音波検査(US)6例、胸部レントゲン検査3例、胸部CT検査4例(全23例中、他は不明)でした。

2)結節の大きさ(結節径)

初診時の結節の大きさについては、2~4cmが約半数、1~2cmが約1/4で、合わせて全体の約75%を占める結果でした。微小とされる1cm以下の症例は約10%、逆に4cm以上と肉眼的に目立つ大きさになってから初めて受診された症例は15%という結果でした。

甲状腺細胞診の判定方法と結果および考察

1)判定方法

甲状腺癌取扱い規約において、甲状腺の細胞診では次のような判定区分を用いることが勧められています。

<甲状腺細胞診の判定区分と該当する所見および標本・疾患>

(甲状腺癌取扱い規約第7版, 2015)

2)判定結果

「良性」が約70%、「悪性+悪性疑い」が17%という結果でした。また全体の12%は細胞診断が困難である「検体不適正」でした。この「検体不適正」という判定区分は、細胞診の精度や良し悪しを推定する一つの方法として、2005年の甲状腺癌取り扱い規約(第6版)より記載されているもので、10%を超える場合には採取方法、標本作製法についての検討が必要とされています。

3)考察

今回当院での結果を振り返ると、巨大な嚢胞性病変で排液による自覚症状の緩和が主な目的であり、実質部が疑われる部分もあったものの検査に有用な細胞が採取できなかった症例と、結節の被膜が全体に石灰化しており固くて内部に針先が到達困難であった症例が1例ずつあり、これらを除くと9.3%という結果になります。ただその他に血流が非常に豊富な症例で血液混入が多くなってしまい評価が困難であった症例が数例あったため、血液が多く混入した場合には標本作成時に血液を減らすように今まで以上に注意したいと考えます。
またLBC(Liquid-based cytology:液状化検体細胞診)も今後導入できるようになることを期待しています。LBCとは採取した細胞を固定保存液に回収後、特別な方法で専用プレパラートに塗抹し細胞診検査用標本を作製する方法です。米国を中心に婦人科領域で発達した検体作成法で、近年婦人科領域以外にも応用されています。海外からの報告(Kimら、Malleらの報告)では、通常塗抹標本の不適正率がそれぞれ20.9%、8.93%であったのに対し、LBC標本の不適正率は9.3%、3.92%と改善されています。国内でもLBC+従来法の併用で、前田らは検体不適正率が12.5%から4.3%、鈴木らは5.3%が1.2%へ改善したことを報告しています。院長である細野自身も、2017年に当時勤務していた日本生命病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科において科内全体で32%から17%に改善したことを確認、耳鼻咽喉科臨床学会にて発表しています。ただLBCの導入で検体不適正率は減少するものの、LBCは標本作製法が煩雑でコストがかかるため(2012年度より通常塗抹標本で再検が必要と判断された場合のみ、LBC加算として85点の保険請求が認められるようになっています)、甲状腺領域では(特にクリニックにおいては)まだまだ一般的とは言えない状況です。LBCについては診療報酬が改定されることで検査環境が整えば是非導入したいと考えています。

最後に

発表後、有難いことにいくつか質問をいただいたため、穿刺細胞診検査での合併症のリスク管理やマネジメント、細胞診で不適正を減らす工夫やポイントなどを自分なりに回答させていただきました。

当院のようにクリニックで穿刺細胞診まで行うことは、受診される患者側にも紹介先である病院側にもメリットがあると考えられます。

 

患者側

  • 病院を受診しなくてもよい(病院では平日午前中の診察が中心)
  • 平日の仕事帰りや土曜日に受診可能
  • 検査結果や病状に応じて紹介先を相談できる(希望の紹介先へ紹介可能)
  • 病院での精査・治療後にクリニックに戻りやすい

 

病院側

  • 専門的な治療が必要な症例に集中できる(手術が中心)
  • 治療後、定期観察や投薬などが必要な場合、紹介元のクリニックへ紹介しやすい

ご存知の通り言うまでもなく、良い医療を提供するためには、近隣のクリニックや病院との良好な連携が非常に大切になります。連携を賜っております近隣の医療機関の皆様に支えられ、当院が掲げる「地域に密着した甲状腺腫瘍の診療」という医療の在り方を体現できております。いつもご紹介いただく健診施設やクリニックをはじめ、専門的な検査や治療が必要な場合に紹介させていただく病院の医師やスタッフの方々に心より感謝申し上げます。

これからも病院との懸け橋になれるよう診療を行っていきたいと思いますので、甲状腺についてお困りの場合、お気軽に当院までご相談いただければ幸いです。

<参考文献>
  1. 甲状腺腫瘍ガイドライン2024 日本内分泌外科学会
  2. 甲状腺癌取扱い規約第7版 日本甲状腺外科学会、2015
  3. 細野研二、赤羽誉、金澤成典ら:当科における液状化検体細胞診(LBC)導入後の穿刺吸引細胞診に関する検討、第79回耳鼻咽喉科臨床学会(2017年7月)
  4. Malle D, Valeri RM, Pazaitou-Panajiotou K, et al. : Use of a Thin-Layer Technique in Thyroid Fine Needle Aspiration. Acta Cytol 50 : 23-27, 2006
  5. Kim DH, Kim MK, Chae SW, et al. : The Usefulness of SurePath™ Liquid-Based Smear in Sono-Guided Thyroid Fine Needle Aspiration ; a Comparison of a Conventional Smear and SurePath™ Liquid-Based Cytology. Korean J Cytopathol 8 : 143-152, 2007
  6. 前田智治,古谷敬三,平田真紀子他:甲状腺穿刺細胞診における従来法と液状処理細胞診(LBC)の比較について.日臨細胞会誌 49:108-111,2010
  7. 鈴木彩菜,廣川満良,延岡由梨他:甲状腺細胞診 「不適正」の評価―甲状腺ベセスダシステム導入に向けて―.日臨細胞会誌 52:304-309,2013

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