コラム
Column
2026/06/16
NHK「チコちゃんに叱られる」監修のご報告と『乗り物酔い』Q&A
先日、NHK様からご依頼いただき、NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」にてテーマの監修とVTRでの出演・解説をさせていただきました。(2026年3月13日、14日放送分)
テーマ「どうして乗り物酔いするのか?」
「人はどうして乗り物に酔ってしまうのか」というテーマについて、全体の監修を行うとともに、一般的な質問に対し解説させていただきました。番組は途中から2択のクイズも始まり、とても楽しく学べるようになっていたと思います。
当院では放送前にホームページおよび公式LINEにてアナウンスさせていただいていたため、放送後に多くの患者様から「観ましたよ」「分かりやすかったです」「子供が酔いやすいのですごくためになりました」など、温かいお声をいただきました。
また事前に知っておられなかった患者様で毎週番組を鑑賞されておられる方からも、「驚きました」「録画しました」というお声を多く頂戴しましたし、「チコちゃんに叱られる」という番組の人気の高さを改めて認識しました。


また先日、テレビ東京様からもご依頼いただき、朝の情報番組「おはスタ」の「探究楽学」というコーナーの監修もさせていただきました。
2025年6月2日放送、企画内容は「なんで車酔いをするの?」で、主に小学生に向けたクイズも交えて分かりやすく解説されていました。
こちらも患者様から「分かりやすくて良かったです」「すごく勉強になりました」というお声をいただきました。
少しでも困っておられる方のお役に立つことができるならと今回初めて監修というお仕事にチャレンジさせていただいたこともあり、皆様から色々なお声を頂戴し非常に嬉しく思っております。また患者様から改めてご質問も頂戴しました。
そこで遠方等の理由にて当院に来ていただけない方の疑問にもお答えすべく、改めてご質問いただいた内容や普段からよく頂戴するご質問に対して、Q&Aの形でお答えしたいと思います。
「乗り物酔い」とは、乗り物に乗っている過程で、むかつき(悪心)、冷汗、顔面蒼白などをきたし、症状が強い場合には嘔吐に至るもので、医学的には「動揺病」と呼ばれます。
乗り物の動きや揺れによる内耳前庭系への刺激に、景色の移動等による視覚的刺激、飲食によるお腹からの刺激、嗅覚(ニオイ)の刺激、自律神経への刺激、また心理的要因が加わることで、普段慣れていない刺激に対して脳内に混乱が生じ、自律神経も不安定となり上記症状が出現します。この揺れやスピードなどの刺激に対する「限界」には個人差があります。刺激がかなり強くなれば、症状の程度に差はあっても、ほとんどの人が乗り物酔いを感じることになります。また極端に乗り物に弱い人もおられ、健康な人の1〜5%ほどと考えられています。
様々な情報系(頭部と眼球の運動情報、その動きを監視する内耳からの情報、情動に関係する大脳辺縁系の情報など)が発症過程に重要と考えられており、内耳からの情報と頭部・眼球運動の予測情報とにズレが生じたとき、不快情報として大脳辺縁系に伝わると、自律神経が不安定な状態になっていきます。
自律神経が不安定になるため、体調不良、寝不足、暴飲暴食、不安や緊張などで生じやすくなります。睡眠不足や疲労状態の時には血圧が下がり気味になり自律神経系が乱れやすくなるため、酔いやすくなると考えられています。睡眠不足、空腹、急ブレーキ・急発進、読書の4つがそろうと、大人でも約9割が乗り物酔いをするとデータもあります。
お腹の状態は空腹過ぎても満腹過ぎても良くありません。また乳製品や炭酸水の飲み過ぎにも注意しましょう。排気ガス等の不快な匂い、走行中の読書やスマホに集中する行為も原因になります。また急ブレーキや急発進、急カーブなども増悪要因となります。お子様を連れてのドライブや長距離移動では、これらを避けることが大切です。
まず基本的な考え方として、次の5つが大切になります。
- 長く乗らない
- 頭などを揺らさない
- 目を使わない
- 乗り物酔い止め薬の服用する
- 体調を整えておく(不安情動・自律神経を整える)
次に、具体的な対策として、「事前」に行えるものと、「乗車中」に行えるものとに整理します。
<事前対策>
- 前日は十分な睡眠をとる
- 空腹、満腹を避ける(特に胃腸に貯留しやすい多い食事を避ける)
- 乗り物内では悪臭、高温などを避ける
- 窮屈な衣服を避ける(下着やベルトにも注意)
- お気に入りの音楽や心地よい香りを用意しておく
- グミやガム、チョコレートなどを準備しておく
- 乗車中に楽しめる簡単なゲーム(スマホを用いないもの)やクイズなどを準備しておく
- 酔い止め(抗ヒスタミン薬など)を30分ほど前に内服する(特に事前に一度は試しておくとよい)
- 運動不足気味の場合には、出発の1週間前から自宅での体操やウォーキングを取り入れる
<乗車中対策>
- 揺れの少ない座席に座る
- 進行方向に向かって座り、前方が見えるようにする
- 遠くの景色を見る
- ヘッドレストで頭部の動きを抑える
- 読書やスマホの操作をしない
- 眼を閉じているか、眠るようにする
- 悪臭、高音、高湿度を避け、必要に応じて窓を開けて風にあたる
- 心地よい音楽をかけ、時にはみんなで歌ってみる
- 会話、音楽などで気を紛らわす
乗り物酔いは一般的に3歳頃より発症し始め、小学校の高学年(4~6年生)をピークに、中学、高校になるにつれて減少すると言われています。
小さいお子さんのいるご家庭で普段の生活でできる対策として次のようなものがあります。
<慣れの促進>
- 長い時間その状況で過ごすか、短い時間でも何度も繰り返し経験することで慣れが生じることが分かっています。動揺病に至らない程度の、「短く軽い乗車」を繰り返すのが有効です。短い時間でも回数を多くする方が効果的とされています。
- 自家用車であれば、後部座席よりも前方の景色がよく見える助手席にお子様を座らせてください。チャイルドシートとシートベルトを用いてしっかり体を固定しながら目線を高くすることも大切です。また頭はしっかりとシートにつけるように説明してください。
〈運動習慣の促進〉
様々な運動やスポーツを続けることで乗り物酔いしにくくなると考えられています。飛んだり跳ねたり走り回ったり、色々な運動をしておくことが効果的です。
〇自宅でできる運動
- ベッドや布団の上でのマット運動(前転、後転)
- バランスボールなどを用いた体操
〇公園などでできる運動
- ブランコ
- 滑り台
- 鉄棒
- 一輪車
- 鬼ごっこ
〇スポーツ
- トランポリン
- 水泳
- ダンスやバレエ
<参考文献>
- トーマス・ブラント:動揺病. めまい(改訂第2版) : 471-481. 東京 : 診断と治療社 : 2003
- 平柳要:乗り物酔い(動揺病)研究の現状と今後の展望.人間工学 42:145-148,2006
- 平柳要,佐藤誠,中村泰輔,他:試験成分入りチューインガムによる動揺病の予防効果.人間工学 43:341-348,2007
- 山本昌彦,吉田友英:動揺病(乗り物酔い).JOHNS 27:1249-1253,2011
- 高橋正紘:乗り物酔い・下船病.医学と薬学 72:1349-1366,2015
- 宇野敦彦:乗り物酔い(動揺病).小児科臨床 72(増刊):1297-1301,2019
- 神田裕樹,角南貴司子:動揺病.JOHNS 38:1345-1348,2022
- 野村泰之:高齢者の疑問にどう答えるか―耳領域 乗り物酔いの予防法はありますか?.JOHNS 39:945-948,2023
- 稲葉翔吾,川村淳,奥山知子,他:ミントガムによる乗り物酔い軽減効果.人間工学 59:218-224,2023
- 前田陽平,宇野敦彦:乗り物酔いを科学する.チャイルドヘルス 27:273-276,2024
- 坂田英治:「乗り物酔い」撃退ブック マキノ出版 2004
- 高橋正紘:動揺病: ヒトはなぜ空間の奴隷になるのか 築地書館 1997





















