コラム
Column2021/02/02
甲状腺について
甲状腺は頸部前面の下部(のどぼとけの下)にあるホルモンを産生する臓器(内分泌腺)で、HあるいはU字形をしており、左葉・右葉・峡部(左右を結ぶ部分)からなっています。両葉の大きさは縦3-5cmで、喉頭と気管上部に接しています。また外側では総頚動脈に、後方では食道と接しています。
甲状腺が産生するホルモンは「甲状腺ホルモン(T3、T4)」と呼ばれ、脳の下垂体から分泌される「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」により産生量を調整されています。
《甲状腺ホルモンの役割》
- 細胞の新陳代謝を活発化(脂肪や糖分を燃やしてエネルギー産生)
- 交感神経を刺激(脈拍などに影響)
- 成長や発達を促進
甲状腺疾患の頻度は年々増加傾向にあります。原因の一つは、健診の意識が高まっており、症状の有無にかかわらず甲状腺疾患を指摘されることが増えていることです。最近では、胸部CTや頸動脈エコー検査(動脈硬化の診断に有用)が行われた際に指摘され、耳鼻咽喉・頭頸部外科へ紹介されるケースが特に増えています。もう一つの原因としては、医療のレベルや診断技術が進歩したことで、血中甲状腺ホルモン測定、各種抗体検査の測定が容易になったことや、エコー検査機器等の能力が向上していることが考えられます。また高齢化によって発見機会が増加していることも考えられます。
機能別分類
甲状腺疾患を機能的に大きく分類すると、(1)甲状腺中毒症(主に甲状腺機能亢進症)、(2)甲状腺機能低下症、(3)甲状腺機能正常の3つに分かれます。
1.甲状腺中毒症
「甲状腺中毒症」とは、血液中に甲状腺ホルモンが過剰に存在することにより様々な症状が出現している状態で、甲状腺自体の機能が亢進し甲状腺ホルモンを過剰に産生している「甲状腺機能亢進症」とは全く同じ意味ではなく、多くの原因疾患を認めます。
代表的な原因
①バセドウ病 ②亜急性甲状腺炎 ③無痛性甲状腺炎 ④甲状腺機能性結節(プランマー病) ⑤橋本病の急性増悪 ⑥妊娠甲状腺中毒症
症状
動悸、息切れ、多汗、食欲亢進、体重減少、手の震え(手指振戦)、全身倦怠感、イライラ、不眠 など
【症状別ページ】
①バセドウ病
②亜急性甲状腺炎
③無痛性甲状腺炎
④甲状腺機能性結節(プランマー病)
⑤橋本病の急性増悪
⑥妊娠甲状腺中毒症
2.甲状腺機能低下症
体内の臓器や組織内での甲状腺ホルモン作用が低下した状態。
代表的な原因
①橋本病 ②甲状腺手術後や頸部への放射線照射後 など
症状
全身倦怠感、身体のむくみ、便秘、食欲低下、寒がり、皮膚のかさつき、集中力低下、脱毛など
【症状別ページ】
①橋本病
甲状腺腫瘤
甲状腺腫瘤を大きく分類すると、(1)良性腫瘍、(2)悪性腫瘍とに分かれます。
良性腫瘍の代表的なものとしては①腺腫様甲状腺腫、②濾胞腺腫、③甲状腺囊胞などがあり、悪性腫瘍の代表的なものとしては①乳頭癌、②濾胞癌などがあります。
症状
自覚症状を認めない場合がほとんどです。大きくなると前頸部の腫瘤に自分で気付いたり周囲から指摘されたりします。悪性の場合には声のかすれが出現することもあります。
検査
血液検査、超音波検査(エコー検査)、穿刺吸引細胞診検査(腫瘤に細い針を刺して細胞を採取し、良性か悪性かを中心に調べる検査)
治療
良性腫瘍
基本的には経過観察が中心になります。ただし以下の場合には手術の適応となることも多いです。
a. 腫瘍が増大しているもの(最大径4~5cm以上を目安とすることが多い)
b. エコー検査所見:腫瘍の内部が充実しており、血流が多く、形状が不整で、石灰化を伴うもの
c. 周囲の臓器を圧迫するもの
d. 美容上観点などより手術を希望される場合
悪性腫瘍
大部分のタイプで手術が第一選択となります。
当院では、血液検査(甲状腺機能など)や頸部超音波検査(エコー検査)、腫瘍に対する穿刺吸引細胞診検査などを行うことが可能です。健診などで甲状腺に異常を指摘された際には、一度当院へご相談ください。