コラム
Column2021/12/14
鼻レーザー手術について
以前のコラム(鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版について)でもお話した通り、アレルギー性鼻炎の手術治療としてガイドラインに記載されているものの中に、鼻粘膜の縮小と変調を目的とした手術(鼻粘膜変性手術)があります。
これは花粉症などアレルギー性鼻炎の反応が主に生じる、鼻内の下鼻甲介というところの表面の粘膜を変性させ、アレルギー反応を生じにくくするものです。
当院では炭酸ガスレーザーを用いて粘膜を焼灼しており、正式には「下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術」と呼ばれます。
1.作用機序
下鼻甲介粘膜固有層の浅層(表面のごく浅い層)をレーザーで焼灼します。レーザーが照射されると下鼻甲介粘膜の表層(線毛円柱上皮)は蒸散し、扁平上皮化生(粘膜が固く変性する)が生じます。
2.方法
15分の局所表面麻酔を行った後、診察室で行います。鼻入口部よりレーザー機器の先端を挿入し、両鼻の下鼻甲介粘膜を広くレーザーで焼灼します。手術中は、眼球保護のためにゴーグルを装用していただきます。焼灼中は煙が発生しますが、痛みや出血はほとんどなく、術後問題がなければすぐにでも帰っていただけます。
3.対象
当院では基本的には中学生以上を対象としています。
(小学生の場合には鼻内所見、アレルギーの強さ、普段の診察時の様子などより判断させていただきます。)
4.期待できる効果
●短期的作用:
下鼻甲介粘膜でのアレルゲン曝露を防御するため、アレルギー反応が生じにくくなります。また表層が固いため粘膜腫脹が抑制され、鼻閉も生じにくくなります。
●長期的作用:
数ヵ月以内には扁平上皮化生が徐々に落ち着き,線毛円柱上皮が回復するとされています。
しかし粘膜固有層自体には瘢痕が残るため、約1年程度は効果が持続します。
(効果の持続期間は、アレルギーの強さや鼻内の構造等に影響を受けるため、個人差があります。)
5.良い点
- 薬による治療から解放される可能性が期待できます。
- 薬では効果の出にくい鼻づまりに対して効果が期待できます。
- 眠気の副作用がありませんので、受験生の方や仕事で車を運転される方などでも安心して受けていただくことができます。
- 薬と併用することで、薬の減量や副作用の軽減を期待できます。
- 「舌下免疫療法」とも同時に行うことが可能です。
- 通常、後遺症等の危険性を認めません。そのため効果が弱い場合には、数週間毎に何度か繰り返し行うことも可能です。また1年以上経過し効果が弱くなってきた場合でも、安心して再手術を受けていただけます。
6.注意を要する点
- レーザー治療後は鼻症状が一時的に悪化します。回復には2週間程度かかります。
- 鼻炎症状全般に効果を認めますが、その効果は通常約1年程度です(効果持続期間には個人差があります)。アレルギーを根本的に改善させる治療法ではありません。
- 目や身体のかゆみには効果を認めません。
7.費用について
通常両側を同時に行います。アレルギー性鼻炎または花粉症の方は保険適応となり、3割負担の場合で約1万円です。
8.スギ花粉症の方へ
術後炎症が完全に落ち着くまでに約1か月程度要するため、翌年のスギ花粉症シーズンの効果を期待する場合には、毎年10月~12月に受けていただくことをお勧めしております。逆にスギ花粉飛散中(花粉症の症状出現中)はレーザー手術の効果があまり期待できないため、手術をお勧めしておりません。
以上、鼻レーザー手術についてまとめさせていただきました。
◎レーザー治療は以下のような方へ特にお勧めします。
◆毎年花粉症のお薬の効果が不十分な方(特に鼻づまりでも悩まされる方)
◆1年を通して鼻炎症状に悩まされる方
◆多数のアレルギーをお持ちの方
◆妊娠中などでお薬をあまり飲みたくない方
◆車を運転する、または受験などで、お薬の眠気が気になる方
鼻レーザー手術につきましては、事前に診察のうえ、ご予約をお取りいたします(要予約)。
お気軽に当院までご相談ください。