
コラム
Column
2021/06/17
子供の乗り物酔いは治らない?(動揺病)
「乗り物酔い」とは、乗り物に乗っている過程で、むかつき(悪心)、冷汗、顔面蒼白などをきたし、症状が強い場合には嘔吐に至るもので、医学的には「動揺病」と呼ばれます。
一般的には3歳頃より発症し始め、小学校の高学年(4~6年生)をピークに、中学、高校になるにつれて減少すると言われています。子供のころ、遠足や修学旅行などのバスで酔ったことがあるという方は、決して少なくないと思います。
■乗り物酔いの原因とは?
乗り物の動きや揺れによる内耳前庭系への刺激に、景色の移動等による視覚的刺激、飲食によるお腹からの刺激、嗅覚(ニオイ)の刺激、自律神経への刺激、また心理的要因が加わることで、普段慣れていない刺激に対して脳内に混乱が生じ、自律神経も不安定となり上記症状が出現します。体調不良、寝不足、暴飲暴食、不安や緊張などで生じやすくなるのは、自律神経が不安定になるためです。
また様々な情報系(頭部と眼球の運動情報、その動きを監視する内耳からの情報、情動に関係する大脳辺縁系の情報など)が発症過程に重要と考えられており、内耳からの情報と頭部・眼球運動の予測情報とにズレが生じたとき、不快情報として大脳辺縁系に伝わると、自律神経が不安定な状態になっていきます。実際、乗り物に酔いやすい人でも、自分で自動車を運転する場合に酔わないのは、この予測された情報(揺れの予測)があるかないかの違いであると考えられています。
動揺病を誘発するものとして、睡眠不足、空腹、食べ過ぎ、乳製品・炭酸水の飲み過ぎ、排気ガス等の匂い、走行中の読書、急ブレーキや急発進、急カーブなどが考えられています。
お子様を連れてのドライブや長距離移動では、これらを避けることが大切です。
■具体的な乗り物酔いの予防方法や対策
●当日の対応
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- バスでは進行方向が見えるようになるべく前の方に座る
- 乗り物に乗る際には後ろ向きの座席を避ける
- 船では振動の少ない中央部に座る
- 乗り物内での読書を避ける(近い物を見るほど、内耳と予測される頭部・眼球運動との間のズレが大きくなります)
- 長時間乗り物に乗る当日は空腹や過食を避け、胃腸に貯留しやすい脂肪分の多い食事(カツ、天ぷらなどのような食事)を避ける
- 身体を締め付けるような下着やバンドをしないようにする
- 風通しをよくする
- 乗る前に排便・排尿をしておく
- 前日は十分な睡眠をとるようにする
●日常生活での慣れ
ブランコ、一輪車、トランポリン、水泳などの運動(加速度や振動状態が予測できる運動)が効果的と言われています。
様々な運動やスポーツを続けることで乗り物酔いしにくくなります。
■乗り物酔い予防・緩和するくすり
ただ、やはり乗り物酔いしやすい方は、特に体調不良時など、成人でも心配になられる場合もあるかと思います。その際には乗りもの酔い症状の予防及び緩和に薬物療法が効果的です。乗車の30分前に内服することで効果が高まります。病院で処方される抗動揺病薬としては次のようなものがあります。
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- 抗ヒスタミン薬(成分名:ジフェンヒドラミン、プロメタジンなど)
→副作用として眠気があり、寝てしまいたい時にも有用です - 抗コリン薬(成分名:スコポラミンなど)
- 抗ヒスタミン薬(成分名:ジフェンヒドラミン、プロメタジンなど)
ただし、排尿障害、前立腺肥大、閉塞隅角緑内障などの病気を認める方は基本的に内服できません。
現在様々な市販薬も販売されていますが、前述の病気を認める方は医師へ相談が必要です。
また安定剤、抗うつ剤、感冒薬、鼻炎薬等を内服されている方も、副作用が強まる恐れがあり、医師への相談が望ましいとされています。
「動揺病」についてご心配な場合には、当院へお気軽にご相談ください。